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放火・不審火
岐阜県

廃ホテル 相次ぐ不審火「犯罪の温床になる可能性」 岐阜

2022年05月

東海地方で廃虚の火災が相次いでいる。県内では、養老町大巻の旧「ホテルフルー」で、昨年12月と今年3月に不審火が発生。放火の疑いもあり、専門家は「対策を取らなければ犯罪に使われ、さらにエスカレートする恐れがある」と警鐘を鳴らしている。

■放火の可能性

 国道258号沿いの住宅街の外れに、鉄骨3階建ての旧「ホテルフルー」がたたずんでいる。ホテルの外壁はスプレーで落書きされ、窓ガラスが所々割れていた。旧ホテルでは、昨年12月4日、今年3月12日にそれぞれ2階の客室一室が燃える不審火があった。近くに住む30歳代の男性は「火事が度々起きていて嫌な気持ち」と不安を隠さない。岐阜県警は放火の可能性があるとみて捜査している。

岐阜県警養老署によると、旧ホテルは、遅くとも2013年頃からは営業していないという。インターネットの動画投稿サイト「ユーチューブ」で、ホテル名を検索すると、17年以降に少なくとも10本の動画が投稿されていた。建物の中に立ち入って探索する内容で、190万回以上再生されている動画もあった。

他県では、三重県で3月20日、菰野町菰野の元旅館「鶯花(おうか)荘)が全焼した。愛知県でも同月26日、岡崎市山綱町の廃業したホテル「白扇」の一部が燃えた。いずれも、インターネト上で「心霊スポット」などとして取り上げられた場所だった。

岐阜県警によると、廃虚であっても正当な理由なく立ち入ると、建造物侵入罪などに問われる可能性があるといい、「興味本位で入るのは正当な理由には当たらない」としている。

■「特定空き家」に当たらず

 旧「ホテルフルー」では2回目の火災以降、管理会社などが周囲に有刺鉄線を設置。養老署は夜間、ホテル周辺の巡回を強化させるなど警戒を強めている。しかし、捜査関係者は「人員の問題もあるので、警戒をどこまで継続できるかはわからない」とこぼす。

地方自治体は空家対策特別措置法に基づき、倒壊の恐れがあり、近隣に危険を及ぼす可能性が高い建物などを「特定空き家」に指定し、所有者に対して助言や指導などを行う。応じない場合は、「行政代執行」で撤去できるが、養老町が昨年12月に行った調査では、旧ホテルは頑丈で倒壊の危険性がないことなどが確認され、特定空き家には当たらなかったという。同町は、「管理会社とは連絡が取れており、対策も強化されている。行政代執行による取り壊しは最終手段だが、現状ではその段階ではない」としている。

■踏み込んだ対応を

 立正大の小宮信夫(犯罪学)は「入りやすく、外から見えにくい場所は犯罪が起きやすい。廃虚は二つの条件を満たしている。小さな犯罪を放置すると、大きな犯罪につながる「割れ窓理論」というのがあり。見て見ぬふりをすると犯罪の温床になる可能性がある」と警鐘を鳴らす。

その上で、「地方自治体が条例を作るなどして、解体しやすくしたり、立ち入りにくくするためのフェンス設置などに補助金を出したりといった対応も検討すべきだ」として、より踏み込んだ対応の必要性を強調している。

 

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