みんなで守ろう!地域の安全
文字サイズ:
「なぜ携帯電話でこんな事がおこるのが、不思議でなりません!」
子どもからのトラブル相談を受ける合間に、30歳の女性から相談電話が入った。ネットトラブルの相談を受けて10年、最近の典型的な3人の例を紹介する。30歳、23歳、16歳と大人から子どもの順番に比較してみよう。
今年(2010年)の2月から携帯電話で出会い系サイトを利用してやりとりを楽しんでいた。親身になって悩みを聞いてくれたある男性1人に、自宅電話番 号、携帯メアド、写真を送り、会おうということになった。ところが会わないと伝えたら、その男性がサイトの掲示板(運営者しか書けないところ)に自分に対 する怒りと電話番号と携帯メアドをネットに掲載して嫌がらせをするようになった。恐くなってサイトを退会した。 そして、テレビで宣伝しているコミュニティサイトなら安全だろうと、会員に登録した。自己紹介をはじめて10日後に、当時の出会い系サイト利用者と思われる人たちから、自分を知っているかのような嫌がらせを受けるようになった。 なぜ、当時のことを知っている人が別のサイトに出てくるのか、出会い系サイトとコミュニティサイトはつながっているのか。せっかく前のサイトは退会したのに、これではどのサイトも利用できない。 こんなちっぽけな携帯電話で、こんなことになるなんて!不思議でならない。 |
出会い系でおしゃべりをすることが楽しかったのに、信頼された男性に裏切られたようで、嫌がらせ電話や迷惑メールに悩まされている。大人の女性なのに「何で男性の正体を見抜けなかったのだろう」と。印象的だったのは、相談者の最後のひと言。
「こんなちっぽけな携帯電話で、こんなことになるなんて!」
ちっぽけでも大きなインターネットの入り口、という感覚わからないのかな??相談者はネットのしくみがわからない初心者だったので、以下のようにお返事した。
1)実態をお話する
2)これからどうしたらよいかアドバイスする
3)「モヤモヤがとれましたか?」と聞く
4)その他の参考情報
携帯電話の機種を変更しても会員変更にならないことや、コミュニティサイトのミニメールや伝言版のしくみやら監視体制のことやら、携帯電話がネットにつながっていることやら(パソコンと同じだ、と言ったらとってもびっくりしていました)、いろいろお話した。
被害者の視点に触れる前に、自身で被害を作っている現象があることも忘れてはならない。それは「加害者」でも「被害者」でもなく、「自己被害者」といえる行動だ。
23歳の女性からのメール相談は、これほどの自己被害はないであろうという例。どうしたら立ち直れるのだろう。
高校2年生のときに出会い系サイトで知り合った9歳年上の方と付き合っていました。「遠距離で寂しいから」と言われ性行為をビデオで撮られました。ネット での画像流出問題が目立つようになり、私も不安になったので検索してみたら個人撮影ビデオとして販売されていました。今現在、結婚を考えている彼がいま す。彼に知られないように、ネットからビデオを全て削除したい。 |
相談者は「自分の名前」を検索してみた。ネットの便利な検索機能が逆に恐ろしい機能となり、検索すればあっという間に自分の名前と映像がセットになって掘 り出された。解決策は、サイトの削除依頼と検索の非表示依頼をする方法しかないが、完全に消えるまでにかなりの時間がかかる。依頼する度にサイトに登場す る自身の画像を見ることになるので、心情を察するといたたまれない。
原因はインターネットではない。
原因ではなくても、インターネットの存在が悪者となった。
高校時代に男性の正体を見抜けなかったことが元々の原因といえる。出会い系サイトで知り合って結婚する例もあるけれど、真剣な交際を求める人は希(まれ)だと言える。
それでも、インターネットがなければ、知られる確率は少ないだろう。インターネットがある以上は、どうにもしようがない。男性を訴えたところで、インターネットから全て削除する約束をすることはできない。
何も対策がなく、とても悔やまれる例だけれど、さらに被害が拡大しないように願いながら、忘れる努力をするしかない。
最後は16歳の女の子からのメール相談で、これこそお返事しがいがあってチカラが入る。
中1の頃にSNSで知り合った人とお互いの写メ※を交換し合ってしまいました。住んでいるところや名前も教えたこともあります。今、思うと何で教えちゃったんだろうと、とても後悔しています。また、「裸の写メ送ってよ」と言われて送ってしまったことがあります。悪用されていないか不安です。とてもとても後悔しています。過去のことですが怖いです。 |
※「写メ」とは、携帯電話で撮った写真をメールに添付して送ること。または、そのメール
以下のように長文でお返事した。
相談内容を読みました。一般的にケータイで自分の個人情報にあたる住所、名前、自分自身の顔がはっきりわかる画像などをやりとりすることが、さまざまな トラブルのもとになるかもしれないと注意を呼びかけていますね。だからこそ、今、不安になり、後悔もしているのだろうと思います。
いつの時点で画像を送信したかは、メールでははっきりわからないのですが、相手が好きだったからこそ、写メを交換したい、そして交換したのだろう思いま す。その時点では、相手を信じていたからできたのでしょう。現時点で悪用されていないのなら、そこはもう、信じて進むしかありませんね。「住所、名前を教 えてしまってどうしよう!」と思っていても、こちらも同様だと思います。そして何より大切なのは、あなたが現在とても後悔している気持ちを忘れないことで す。将来、同じような状況に立たされた場合に、今あなたが感じている気持ちを思い出してください。過去の怖さにばかりとらわれずに、自分の目標に向かって どんどん進んで欲しいと思います。
そして最後にお願いがあります。もし、あなたの周りのお友達で、かつてあなたが行った行動と同じようなことをしようとする人がいたら、「本当に大切な情 報を送って大丈夫?」と声をかけてあげてほしいです。これは後悔の気持ちを感じているあなただからできることだと思います。
その写真は随分前のものなら、あなただとはわからないと思われます。今、悩みながらも我慢しさえすれば、「あの時はなぜあんなに悩んだんだろう」と感じる 時期がおとずれ、どんどん気持ちが安定してくるはずです。悩み抜いた後は、驚くほど、すっきりするものです。
画像が流出しているかどうかを確かめる手段はありませんが、この件に関して不安になることがあれば、いつでも相談してきてください。どうか現実を見据えて、ネットに振り回されないようにと願います。心配しないで大丈夫!
(お返事はここまで)
思春期、ネットに振り回されないように、現実も見据えることが大切。
警戒しながらもネットにはいろいろな人がいることを知ってほしい。
ネットから一時離れれば、現実の世界でいろいろな人がいることを知って、現実の場で鍛えられ、異性や同性の見る目を現実の場で養っていける。そしてネット の世界に戻った時、「ここでの投稿には注意した方がいい」「この男性は優しそうに見えて、実は恐いに違いない」と、ネット上で責任のとれる振る舞いができ るようになるもの。いきなりネットデビューするのではなく、その前に現実で体験をしっかり重ねていくべきだろう。
1か月後、この16歳の女の子からこんなメールが届いた。偶然その子の学校へ私が講演に行っていたのだ。
「大久保先生、こんにちは!!今日の講演会にいた生徒です。今日、聞いたお話は、とてもためになりました!!将来の自分、今の自分にとっても役に立つ講演会で勉強になりました^^」
お礼の後に続きがあった。
「相談なのですが、私には来年中1になる弟がいます。携帯電話を持つ頃が近いと思います。姉から、携帯電話を持つ前にネットの使い方を注意したいので簡単にわかりやすく教えられるアドバイスをください」
自分が失敗した経験からやさしさが生まれてくる。
失敗は教訓となったわけだが、出来たらその一度でも失敗はしてほしくないもの。ネット上に溢(あふ)れる有害情報を鵜呑(うの)みにせず、自分自身をしっかり見据えてほしい。
30歳、23歳、16歳、それぞれの相談をよくみると、いずれも紙一重で危険なことになっていたかもしれない。不安材料はいっぱいあるけれど、失敗しても立ち直れると信じている。メールでも電話でも、一言かけるだけでも全然違ってくるのだから。
「インターネット上に未来社会を築く」インターネットの発展を推進することにより、高度情報化社会の形成を図り、我が国の経済社会の発展と国民生活の向上に資することを目的とします。