みんなで守ろう!地域の安全

文字サイズ:

ぼうはん日本

全国読売防犯協力会
〒100-8055 東京都千代田区大手町1-7-1
TEL.03-3216-9024 FAX.03-3216-7113
第7回
須谷 修治

青色防犯灯について正しい認識を!

2009年05月20日

平成17年6月、奈良市秋篠台住宅に国内初となる青色防犯灯が設置されてやがて4年になる。
警察当局を始め、地域の自治会・町内会などの“安全・安心まちづくり”に対する切なる願いから、各地で青色防犯灯が点り、夜のまちが白色から青色に一変した。その結果、住民の防犯意識が高まり、夜間パトロール活動、青パトの運行など、活発な防犯活動との連動により街頭犯罪や住宅侵入盗が減少したと度々報道されてきた。
確かに、青色防犯灯の設置により犯罪抑止効果があったという地域はあるが、反面、青色光になって薄暗くなり見通しが悪くなった、気味悪い・寂しいなどと評価されている地域も多々ある。

この際、青色防犯灯に対して正しい認識をして頂こうと、青色防犯灯設置の経緯、青色光に対する調査研究、現地実態調査、青色光の特徴、青色防犯灯と複合的防犯施策との関係などについて、体系的に紹介させて頂いたのでご一読願いたい。


青色防犯灯が設置されたきっかけ

平成17年5月、某民放テレビは、スコットランド・グラスゴー市Buchanan通りで“オレンジ色の街灯を青色に替えたら、犯罪が激減した”という報道を行った。ちょうどこの年、警察庁に「犯罪抑止対策室」が設けられ、全国の警察本部にも同様の部署が設置された。手始めの事業として「地域安全安心ステーション」モデル事業実施地区が全国100箇所指定された。奈良県警察本部は、その指定地区の一つであった奈良市秋篠台住宅地に対して、テレビ報道を参考に青色防犯灯を試験点灯するよう指導した。これが、国内初の青色防犯灯となった。以降、これらのことが新聞・テレビで報道され、奈良県内を始め、島根県・青森県など今やほぼ全国各地に青色防犯灯が設置されることになった。


グラスゴー市Buchanan通りの青色街灯の真相

これまでに、土木技師・犯罪心理学者など複数の方々が現地を訪れている。それらの取材結果を総括すると、青色光により麻薬常習者が腕の静脈が見え難くなったことにより注射が打てなくなり、麻薬関連犯罪が約40%減ったという事実のみで、青色街灯により犯罪そのものが激減したということを現地当局は云っていない。Buchanan通りは、もともと景観改善のために青色街灯に替えたもので、街並みが綺麗になると共に地域の防犯意識が高まり、CCTV(Closed Circuit Television/監視カメラ)設備が更新されたことなどから、犯罪が減少傾向にあることは頷ける。
また、国内の場合は、殆どが20ワット青色防犯灯による照明で、明るさは1ルクス前後しかないが、Buchanan通りでは、大きいワットの街灯で20~150ルクスあり、国内とは照度レベルが格段に違う。


青色防犯灯に対する調査研究

平成18、19年度の2年間に亘り、(財)社会安全研究財団の研究助成を受けて、青色防犯照明研究会(代表研究者:奈良女子大学/教授 井上容子氏)は、青色など5色の有彩色光の視認性、心理的・生理的影響に対する基礎実験、奈良県内を始め各地の実態調査、被疑者・補導少年に対する聞き取り、防犯カメラの画像への影響などの調査研究に取組んで来た。この結果多くの成果を得ることができたが、それぞれについて詳しく説明することは紙面上できないので、その概要を紹介する。

1.視認性については、視力検査に使うランドルト環、色票(9色)などを使い判定したが、色の識別は白色光に勝るものはない。但し、低照度域(月・星明かり程度)では青色光で明るく感ずる現象が見られた。

2.心理的影響については、赤色光は動的・暖かい・緊張など、青色光は静的・冷たい・沈静などの傾向が見られたが、各色光に対して若年者には敏感に、高齢者には鈍感に表れ、また、その日の体調、個人差が大きいことが分かった。

3.生理的影響については、血圧・心拍・皮膚温・脳波・瞬目・ホルモンなど生理量に対して、実験のやり方にもよると思われるが、どの項目についても個人差が大きく、有意差の認められた項目は少なかった。青色光だから、特に沈静化するという傾向にも有意差はなく、むしろ明るさ(照度)の影響が大きい。

4.実態調査の結果、奈良県内を始め静岡・広島・沖縄県まで出向いて現地調査・住民のアンケート調査を行った。その結果、新聞・テレビの報道により“青色防犯灯に犯罪抑止効果がある”と単純に思い込んでいる人が大半と考えられ、青色防犯灯の設置に肯定的、犯罪抑止効果がある、また期待している、今後も継続するのが良い、という意見が多かった。
また、青色防犯灯により住民の防犯意識が高まり、地域で活発な防犯活動が行われるようになったという地域も多く見られた。
一部の地区について、青色防犯灯設置2年半後の状況を調査したが、犯罪発生件数が継続して減少しているという地区がいくつかあった。

図1.に、奈良県香芝市O地区の青色防犯灯の設置事例を示す。

【図1. 20ワット青色防犯灯/平均照度は1.2ルクス(設置間隔22.5m)】
【図1. 20ワット青色防犯灯/平均照度は1.2ルクス(設置間隔22.5m)】

因みに、国内初設置の奈良市秋篠台住宅には36ワット青色防犯灯が設置されており、明るさは20ワットの約2倍ある。(36ワットの光量/全光束は840lm)

5.被疑者・補導少年に対して青色防犯灯の印象・効果について聞取り調査をしたが、青色防犯灯の認知度が約50%と低い中で、全体の50%弱は「犯罪抑止効果があると思う」と回答している。

6.防犯カメラの録画画像については、メーカー・機種によりかなり画像の鮮明度に差がありそうだが、高照度では画質・色識別共に白色光が優れている。但し、低照度では青色光の方が画像が鮮明に映るという機種があった。なお、防犯カメラは駐輪場・駐車場に設置されている。

本テーマに対する調査研究は、上記の他に「石川県野々市町青色街灯推進協議会」、「(社)日本防犯設備協会/特別プロジェクト委員会」、「(財)地方自治研究機構・鹿児島市共同研究委員会」でも行われている。


青色光の特徴

青色光だから、気持ちが落ち着く、明るい、遠くまで見えるといわれているが、かなり誤解がありそう。また、プルキンエ現象で明るく見えるともいわれている。

色彩心理面から:いろいろな色に対する印象評価の研究は、物体色(壁紙やカーテンなどの色)に対するものであり、光色に対するものとは少し違う。この点が混同されている。光色に対する印象評価の研究事例は少なく、むしろ青色防犯灯に関してまとまった研究をしたのは今回が最初かも知れない。

プルキンエ現象:今から180年も前にプルキンエという人が発見した現象であるが、暗がり(低照度域/月・星明かり程度)で青色の物が明るく見えるということであり、青色光下だから全て明るく見えるということではない。また、青色光では遠くまで見えると思っている人がいるが、50m先までの見え方実験を行ったところ、照度が同じなら白色光と見え方に差はないが、白・青色光共に同じランプワット数だと、青色光の照度は1/3以下となり、白色光よりむしろ見え方は低下する。

青色ランプの光量:国内事例の大半が20ワット青色蛍光ランプであるが、白色ランプに比べ、青色ランプの光量(全光束lm/ルーメン)は1/3以下である。しかもメーカーにより異なり、その違いは表1.の通りである。

表1. FL20S・B(青色ランプ)の各社比較
メーカー 全光束(lm) 定格寿命(時間) 価格(円)
A社 410 5,000 840
B社 410 5,000 672
C社 250 5,000 840
D社 345 7,500 735

白色ランプの光量は、1,230lm(3波長ランプ系/パルックやメロウは1,470lm)、定格寿命は8,500時間であるが、青色ランプは、光量が少なく、寿命時間も短い。価格は白色ランプの約3.5倍である。

青色光ランプには、20ワットの他に蛍光ランプでは36、42ワットなど、水銀灯系ランプでは150、250、400ワットがある。また最近、LEDランプを使った青色防犯灯の事例も現れてきた。LEDランプの光色は、蛍光ランプよりもやや鮮やかな青色光であるが、一般に光量は少なく、かなり高額である。


青色防犯灯と複合的防犯施策との関係

複合的防犯施策とは、防犯活動の組織づくりと共に地域の夜間パトロールとか青色回転灯を装備した車両(青パト)の運行や防犯を啓発する掲示などを指す。
防犯灯を白色ランプから青色ランプに単に取替えただけで、地域の犯罪が減少すると考えるのは誤解である。青色光の防犯灯にすることにより、地域の防犯意識が高まり、今までにも増して活発な防犯活動が行われることにより、犯罪抑止効果が期待できるというものである。
表2.に、奈良県内で青色防犯灯を設置した地区の犯罪発生推移(奈良県警察本部資料)の事例を示す。

表2. 複合施策と犯罪減少・増加の関係
  複合施策あり 複合施策なし
犯罪減少箇所 10 14
犯罪増加箇所 10
15 24

表2.より、自主防犯パトロール(青パトを含む)、防犯啓発掲示板の設置及び防犯カメラの設置等の施策を実施している箇所については、犯罪減少との関連が高いことが分かる。

青パトは地域の“安全のシンボルカラー”として浸透して来ている。青色防犯灯も、地域の安全意識の高さをアピールする手立てに十分なり得る。
あくまでも、防犯活動との連動が地域の安全・安心を実現するものです。住民の行動が、青色防犯灯に犯罪抑止効果を上げることの決め手です。


防犯灯の本来的機能とは

“街路の背景全体が見通せ、安全に歩行ができ、前方から来る人が視認できる”ということである。
そのためには、道路面の平均照度は最低限3ルクス必要です。青色ランプでも白色ランプでも同じことです。青色ランプは、前述の通り白色ランプの1/3以下の光量しかないため、青色蛍光ランプで3ルクスを得るには3倍以上のワット数(60ワット以上)のランプが必要となる。
なお、警察庁「安全・安心まちづくり推進要綱」、これに準拠して策定された都道府県「安全なまちづくり条例」の指針に“道路の平均水平面照度はおおむね3ルクス以上”と明記されている。

図2.は、白色ランプで3ルクス以上の明るさがある街路の事例です。図1.の青色ランプの場合と、どちらが安全・安心と思いますか。

【図2. 大阪府八尾市・近鉄駅前からの道路(平均照度4.2ルクス/初期値)】
【図2. 大阪府八尾市・近鉄駅前からの道路(平均照度4.2ルクス/初期値)】

青色防犯灯については、照明研究者、犯罪心理学者、建築・都市計画家、警察当局、自治体、自治会・町内会等、それぞれの立場により捉え方が異なり、「是非論」に対して相容れないところがある。
従って、青色防犯灯の犯罪抑止効果の有・無については、正しい認識の下、地域(自治会・町内会など)の複合的防犯施策の取組みで決まることと思います。


照明学会より、地域の「防犯灯」に関するガイドが発刊された
有彩色光照明ガイド-防犯照明ガイド-

有彩色光照明ガイド-防犯照明ガイド-社団法人 照明学会 関西支部は、大阪府下を中心に長年「地域の防犯灯」の実態調査等を行って来ました。平成17年10月から、奈良市秋篠台住宅の「青色防犯灯」設置をきっかけに、有彩色光に関する基礎的実験結果を行うと共に、全国各地の実態を調査しました。

それらの結果を“防犯照明に関して正しい認識を知って頂く”目的で、一冊のガイドにまとめて見ました。地域の防犯、明るいまちづくりに取り組まれている方々のご参考になれば幸いです。

【ガイドの概要】
有彩色光とは、赤・青・黄・緑など色味のはっきりした光のことです。

  1. 防犯照明の要件と明るさの目標
  2. 有彩色光の特性と視力・識別・空間の印象・生理反応について
    (白色光を含め、青色光など有彩色光について評価実験をした結果を詳細に紹介)
  3. 防犯灯に使われている各種ランプの特徴と電気料金の比較
  4. 防犯灯設置の留意点
  5. 青色防犯灯の事例と犯罪抑止効果等について
  6. 防犯活動のあるべき姿と「夜道の防犯チェックシート」の紹介

サンプル⇒12頁(青色街灯の事例)

【問い合わせ先】
〒550-0002 大阪市西区江戸堀1丁目22-38 三洋ビル4F
有限会社 あゆみコーポレーション内 社団法人 照明学会 関西支部事務局(担当:野田秀俊)
TEL 06-6441-5539 FAX 06-6441-2055  E-Mail ieij-kansai@a-youme.jp

戻る