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大横綱の名言に思う ~「後の先」~

2015年03月
販売企画調査部 佐藤大吉

いま最高の強さと品格を兼ね備えた平成の大横綱白鵬関(第69代)が、テレビのインタビューなどで「後の先(ごのせん)」という言葉をしばしば使うため、意味はともかくとしてご存知の方も多いと思います。

この言葉は、白鵬関自身も語っていますが、不世出の大横綱(第35代)双葉山定次が目指した理想の立ち合いを意味するものといわれています。

白鵬関の63連勝も凄い記録ですが、双葉山関はその上をいく69連勝を記録しています。双葉山関の現役時代は年2場所制でしたから、足掛け3年くらいかけて69連勝を達成した計算になります。連勝記録は関脇時代から始まっており、70連勝をストップされたときには横綱になっていました(勝った安藝ノ海〈あきのうみ〉は後に第37代横綱に昇進しており、金星はこの1個だけでした)。双葉山関が3年の歳月をかけて69連勝の勝ち星を積み上げたことは、力士生命が短命だった昭和の時代、それも戦前だったことを考えると、気の遠くなるほどの高みにある偉業だといっても過言ではないでしょう。

前置きが長くなりました。双葉山関のいう「後の先」とは、双葉山関自身が幼い頃吹き矢で傷つけた右目が失明状態にあったことから、目前の取り組み相手から勝ち星を奪い取るための究極的な立ち合いの戦法を言葉に表したのではないか――、と私は考えています。

仕切り時にしっかり腰を割って重心を下げる。相撲の大原則です。一方、双葉山関の対戦相手は、少しでも自分の有利な体制に持ち込むため「相手より早く立ちたい」と考えるでしょうから、重心の下がりきらないまま仕切り線から突っかけることになります。すると、自ずと脇の甘い立ち合いとなりますから、双葉山関は下から差し手を深く入れ、上手は浅い位置で引くことができます。つまり、双葉山関は十分に相手まわしを引き付けるという磐石な形になります。ここで「勝負あった」です。これが双葉山関の「後の先」ではないだろうか、と私は考えます。コンマ数秒でも、相手の動きを長く見ることが「後の先」の極意に違いありません。こうして双葉山関は、自らの弱点を克服したものと思わずにはいられません。

「後の先」の意味を取り違えてはならない――と、白鵬関の報道を見るたびに私は考えるようになりました。相手の得意な形にさせてから料理することが「横綱相撲」であり、それが「後の先」であるという解釈は「絶対に違う」と思うのです。先手必勝が「後の先」の意味であり、自分の得意な形になって相手を圧倒することが「横綱相撲」なのです。

大関までは負けても出直すことが可能です。ですが、横綱は負ければ引退なのです。「われいまだ木鶏足りえず」など、多くの名言を残した双葉山関ですが、「負け即引退」の十字架を本当の意味で理解していた横綱の一人であったことを証明する言葉が「後の先」だった、と私は解釈します。

「結果がすべて」――といわれる時代になって久しくなりました。どんな手を使っても勝てば評価されるという時代です。果たしてそれでよいのでしょうか。

これからの社会情勢を考えれば、「勝った理由」「負けた理由」をしっかり検証したうえで、次のステップを踏むことが大事でしょう。偶然転がり込んだ幸運は、いつかは必ず転げ落ちてしまいます。

次世代へと「勝利のタスキ」をつなげるため、若者の模範になれるよう「勝った理由」「負けた理由」を伝えることのできる先輩になりたい――、と思う今日この頃の私です。

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