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ぼうはん日本

全国読売防犯協力会
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旅心 もう一つの旅 大人の童話

2008年11月
執筆 渡邊貞治 全国読売防犯協力会参与

みちのくのA県の名刹に取材にでかけた。新幹線駅で下車し西口を出た。駅前は、バスロータリーであった。9番バス停には、最終、午後6時30分発 温泉行きのバスが待っていた。乗客は男3人、女性2人の5人の乗客がいた。30分も走行するとバスは、町並みをはずれ村役場に到着した。役場バス停を過ぎると、 あたりが急に暗くなり、道路等から街灯が消えた。夜の田舎道は本当に暗いと感じながら私は、バスが照らす灯りの先を見ていた。「皆様、本日は、ご乗車有難うございます。定期バスでありますが、町おこしのために、私たち運転手もお客様に案内をしています。宜しくお願い致します」。運転手が、突然車内放送を始めた。

「只今、通行していますところは神社村です。左側の上の方を見てください。ボーッと薄明かりが見えると思いますが、あの灯りは『狐の嫁入り』の灯りです。本日のお客さまは本当に運が良いですね。『狐の嫁入り』の灯りは年に数回しか見ることが出来ません。

村人さえもなかなか見ることが出来ず、灯りを見た村人は、狐が幸福を運んで来てくれるものと、油あげをお稲荷さんに祭るのです。あの灯りのそばには、雲山庵という山寺がありますが、いまから千年前の平安時代、京の都で修行したお坊さんが建てたものです。

しかし、このお坊さんは、美男子であることからこの山寺を建てると同時に、京の都からこのお坊さんに恋をした心里という尼さんが訪ねてきたのです。お坊さんは、仏に仕える身でありますので心里を寄せ付けなかったのです。心里は、狐に化身し毎夜、毎夜お坊さんのところに通ったのです。村人は、心里の死後、心里の悲しい人生を慰めようと山寺 雲山庵のそばにお稲荷さんを建てたのです。狐は今でも『狐の嫁入り』を続けて心里をなぐさめているのです。お稲荷さんにお参りしますと夫婦円満、子宝に恵まれることから、最近は、遠方からの参拝客が多くきています。皆様も時間がありましたら是非、参拝して頂きたいと思います」。

バスは川に沿って進んだ。いつしか温泉入口に到着したので私は下車した。バスは、乗客を乗せて暗闇の中に消えていった。

温泉は、湯が豊富でゆっくりひたり、夕食を迎えた。小さな温泉宿であったことから、女将が挨拶に来た。

「お客さんは、東京の方ですね」。女将は村の四方山話を語った。

「ところで、お客さんは駅からタクシーできたのですか」

「いや、最終バスに乗ってきた」とバスなかでの運転手の話をした。

「おかしいですね。バスは観光客が減ったので、一年前から中止になったのですよ」。女将は怪訝そうに私の顔をみながら

「もしかしたら、お客さんは、狐にだまされてのではないのですか。この村では、狐が人をだますと話され、何人もだまされているのです。乗っていた乗客もみな狐なんです。事故がなくてよかったですね」

私は頭が混乱した。一体どのようにしてこの旅館にきたのか。

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