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今でも 心にのこる旅と人

2008年08月
執筆 渡邊貞治 全国読売防犯協力会参与

学生時代、無銭旅行の経験がある。北海道への無銭旅行である。無銭旅行といっても、全く金を持たずに旅行するのではない。アルバイトをしながら旅行するのである。
昭和36年当時、江戸川河川敷きには、直径1メートルくらいドラム缶置き場があり、このドラム缶の錆び落としがアルバイトであった。家庭教師のアルバイトは、人を教えるほど自信が無く家庭教師は避けていた。
真夏のドラム缶の錆おとしは金になったが重労働であった。錆が身体に付くと皮膚がただれてしまうことから、長そでの服、手袋、水中メガネをつけ肌を一切出さず、ドラム缶に入り、グラインダーで錆を落とすのであった。
30分もすると目がクラクラして15分休むという作業であった。ここで1週間アルバイトをして少々のお金をため、急行券を買うお金を節約して名寄駅までの乗車券を買い各駅停車で上野駅を発った。

25時間かかって名寄駅についた。無銭旅行の鉄則は学生らしさを、失しなわないことである。服装は大学の記章入りの詰めえりの学生服、写真付学生証を持っていくことであった。
青函連絡船では年配の男性に「○○大学の学生さんですか」と声をかけられ、「私は君の先輩である」と先輩の学生時代の話をききながら食事をご馳走になった。

名寄駅からは深名線に乗り、湖畔駅で下車した。駅からは約1キロ離れたところに朱鞠内湖(しゅまりないこ)があり、人造湖である。青く澄み切った湖面は美しく、深名線の列車は旅情をそそいた。湖畔駅を下車するとアカゲラのなき声が聞こえ、白樺の木々が北の国を感じさせてくれた。

湖畔駅で下車したが、野宿するわけにも行かず、取りあえずアルバイト先を探す。駅の近くで男性に牧場がないかと尋ねたところ近いところで5キロ先にあるとのことであった。そこまで行く交通の便はなく、やむを得ず3キロぐらい歩いた。途中、馬車がきたので乗せてもらい牧場までいった。

牧場は、牛が10頭、馬2頭いた。牛舎で、東京の大学生で夏休みで北海道に遊びに来た。無銭旅行であるが、アルバイトするので、食事と札幌までの旅費を働かせて欲しいとお願いしたところ、あるじは、身分証明書をみただけで、食事付一日500円で許可してくれた。
牧場のあるじは、学生のアルバイトはそう頼りにしていなく、仕事は、牛乳缶の洗いであった。よほど、ドラム缶に因縁があるものと思いながら3日目、夕食を食べていたところ、奥さんから、「近所の子どもの勉強を見てくれないか」と依頼された。

子どもは中学生2人と小学生2人の4人で、近くの分教場で午前中教えることであった。午後は、牧場での牛乳缶洗いをやる約束であったが、親は、子どもの面倒をみてくれれば良いと言われ、子ども達を連れて朱鞠内湖(しゅまりないこ)に魚つりや山遊びに出掛けた。
りすを生け捕りにした経験は今でも忘れることが出来ない。子どもたちは、りすの習性を本能的に覚えており、この習性を利用して捉えるのである。言葉では、簡単であるが、最初は、リスの好む木を探すことから始まった。樹液が出ている割れ目の木を探し、その割れ目の上に、リスのすきな馬鈴薯を 網に包んでおくことである。馬鈴薯は網に包んでいることからリスはなかなか食べることが出来ない。イライラして無理して食べようとすると馬鈴薯がくずれて 下に落ちる。このくずれた馬鈴薯を罠の篭にためておき、リスが篭に降りてきたところ蓋をしめて捕らえるのである。リスは非常に警戒心が強く少しでも人の動 きを感じると逃げてしまうので、大人の傘ぐらいの蓮の葉を頭から被り息を殺して待った。

親父さんに連れられて幌加内の町によく飲みに行った。当時は、自動車がなかったので馬車で出掛けた。二人とも酔いつぶれて馬車の荷台で眠るのであるが、馬の手綱を荷台に固定して置けば、夜道でも馬は自宅まで何を言わず連れて行ってくれた。馬の驚く習性に感心したものであった。熊の出没する話や警戒するように何度も注意されたが、熊は一度も見なかった。しかし、北狐は自宅近くによく出没 し、毎晩のように見た。
夏の夜は、ギョウジャニンニクを入れたジンギスカン料理に舌鼓し、とうもろこしを食べ、新鮮な野菜が豊富であった。朱鞠内湖(しゅまりないこ)も8月も20日が過ぎると秋風が吹き、空は澄み、星が輝き天の川が流れるようなった。
いろいろの思い出を胸に残して朱鞠内湖を去った。あれから50年牧場の親父夫婦はなくなり牧場は廃止になった。勉強を教えた子どもたちは旭川に出たようで あるが音信不通であれから一度も会ったことがない。深名線は、平成7年廃止になり湖畔駅はくずれた石垣が当時の面影を残すだけである。朱鞠内湖(しゅまり ないこ)の湖水は、昔と変わらずいまでも青く透き通り吹く風が快く迎えてくれる。

秋葉原の通り魔事件、八王子女性刺殺事件など若い世代の人たちの犯罪が多発している。携帯電話、メールの発達は、人と人との面接、会話技術を低下させ、感性を無くしてきたのようである。一度皆様も朱鞠内湖に行き、雄大な北の国に接し、感性をたかめてはいかがですか。白のじゅうたん、蕎麦の花が心を清めますよ。


写真提供 幌加内町総務課企画室広報統計係

幌加内の詳細は、こちらのHPをご覧ください。
http://www.town.horokanai.hokkaido.jp/

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