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ぼうはん日本

全国読売防犯協力会
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津波被害から復活を目指す街

2016年04月取材

 陸前高田市は、三陸海岸南部に位置する町です。「りくぜんたかだ」ではなく、「りくぜんたかた」という呼び名が正しいのだそうです。

  

今回、全国読売防犯協力会の取材班は、陸前高田市を訪れました。今回の訪問先は、岩手県警大船渡警察署高田幹部交番(写真右)です。

 

                                         

ちなみに「幹部交番」は、ある程度人口の多い市や町で、独立した警察署を置かない地域にあります。交番所長の階級は警視や警部(通常の交番所長は警部補や巡査部長)だそうです。 

こんなことを文章にすると取材班の私たちの年齢がばれてしまいますが、「星影のワルツ」「北国の春」で大ヒットを飛ばした歌手〈千昌夫さん〉の出身地――という印象の強い町です。

                            【所長の三島木警視】

「北国の春」を作詞した〈いではくさん〉は、彼の故郷である長野県の光景を詞にした――といわれています。でも、私たちは〈千昌夫さん〉が歌唱し、よれよれのコートと帽子、丸眼鏡姿が脳裏に映像として浮かんできます。ですから、私たちは岩手県の春を歌ったものとずっと思っていました。

 あの日から5年――。私たちは陸前高田市の高田幹部交番の取材に訪れました。

 

※全国読売防犯協力会【Y防】※交番所長:三島木(みしまぎ)達也警視【所長】

【Y防】三島木所長の出身地はどちらですか?

【所長】盛岡市です。

【Y防】勤続何年になられますか?

【所長】32年になりますかね。警備、地域畑を歩んできました。

【Y防】当交番に着任されたのはいつでしょう?

【所長】この3月28日に着任したばかりです。

【Y防】勤務形態、勤務人数、年齢構成など、差し支えない範囲内でお教えください。

【所長】11人体制で勤務しています。年齢構成は50歳代もいれば20歳代もいるといったところです。

【Y防】交番勤務の特徴などはありますか?

【所長】ご承知のことと思いますが、大船渡署管内の交番すべてが津波被害に遭い、新聞やテレビの報道で使われた言葉ですが、まさに「壊滅」という状況に陥ったのです。高田幹部交番は高田町の中心にありましたが、ひとたまりもなく波にさらわれてしまいました。

【Y防】バス高速輸送システム(BRT)でここまで移動してくる途中、車窓から海岸が見えていました。あの水平線の向こうから5階建てのビルを呑み込むくらいの高さの津波が何度も押し寄せたと聞きましたが、想像を絶するほどの恐怖だったことでしょう。私たちにはその恐怖をはかる由もありませんが――。

【所長】………。

【Y防】あの日は東京も震度5強という強い地震でした。当時、東銀座にある仮社屋にいましたが、私たちの事務局のあった9階でもビルの壁に亀裂が入りました。交通網は完全マヒの状態になるなど、パニックに陥ることの恐怖を、多くの人が感じました。また、東京の隣県である千葉県旭市でも津波被害に遭うなど、未曽有の大災害になってしまいました。

言葉にしてどのように表現すればよいのか。私たちにはとても難しいのですが、私たちの想像をはるかに超える未曽有の大災害に、警察官としてどのように対応されたのでしょう。また、一人の一般人としてどのように今日まで過ごしてこられたのでしょうか。

          【交番内に設置された祭壇】

 

【所長】先日4月7日に当交番の開所式を行いました。ここに勤務していた高田幹部交番の所長、副所長、巡査の警察官3人が、地域住民の避難誘導を行っている最中、津波に巻き込まれ殉職されています。殉職された所長は当時60歳で定年を間近に控えていました。副所長は38歳と脂の乗った仕事ができる年齢で、そして巡査はわずか21歳という若さで副所長とともに命がけで地域住民の避難誘導に全力を挙げました。

また、気仙(けせん)駐在所、矢作(やはぎ)駐在所の巡査部長と高田付近にいた非番の巡査3人も、この街の地域住民を避難誘導しようと駆けつけ殉職――。合計6人の警察官が殉職されました。

 

   

【Y防】やはり適切な言葉を見出すことはできませんが、「地域住民を守るんだ」という「警察官魂」「使命感」に、警察の皆さんに守られている――という事実を私たちいま、強く感じているところです。

さて、目下のところの高田幹部交番が取り組んでいることを少しお聞かせください。

【所長】お二方がご覧になったように、まだまだダンプカーばかりが道路を走り、重機が土地のかさ上げをしている状況です。よって、地域住民の方々は仮設住宅に暮らす方も多いのです。1310棟3238人(2016年3月末現在)が仮設住宅にお住まいです。街づくりはこれから――という段階ではあっても、地域住民の方々は新たな生活を求め、市外に移り住むようになっています。

実はこうしたことで、今まで保たれていた地域コミュニティーが崩れてしまうことも、残念ながら出現します。いわゆる「孤独死」の発生事案が出てきています。

私たちは新しい街づくりの中で、このような悲しい事案に遭遇しないよう地域コミュニティーを維持するための見守り活動にも力を入れているのです。

【Y防】テレビや新聞などの報道より、所長の口からお聞きすると、安心・安全な暮らしを守ることの難しさを考えさせられると同時に、警察組織の力強さはもちろん、私たち民間人も継続的なボランティア活動を展開しなければならない――と、意を新たにしているところです。

もう一方の見守り活動はいかがでしょう。先ほど申し上げましたように道路はダンプカーが荷台に土を満載して行き交っています。児童や生徒たちを交通事故から守る――ということも、陸前高田市を将来背負って立つという意味で、さらに大切に思われますが――。

【所長】その通りです。いま私たちの課題の一つには「子どもたちの見守り」をどのようにするかということがあります。津波によって小中学校は移設されたり統合されたりしています。そのため、まだ通学路が決まらないなどの弊害が残されています。また、街路灯の設置も遅れていることから、こうしたことも早急に取り組むべきことと、私たちは行動を起しています。

【Y防】子どもたちに対する防犯活動として、大船渡警察署の掲示板に貼付してありましたが「防犯戦隊ケセンジャー」が大活躍しているようですね。

 

【所長】ポスターを見られましたか? 実はこの交番からも1人が参加しています。役柄は「悪の手先」ですが(笑)――。幼稚園、小学校低学年を対象にした防犯寸劇に登場するヒーローが「防犯戦隊ケセンジャー」です。正義のキャラクターヒーローは、「大船渡レッド」「陸前高田ブルー」「住田グリーン」の3体で、防犯標語「いかのおすし」を教えています。結成して5年が経過しますが、この間100回を超える出動をしています。【右写真参照】

引き続き、地域防犯への貢献を果たすべく交番所員は業務に精励します。

 

【Y防】多くの子どもたちから感謝の言葉が手紙として貼付されていました。「おまわりさん、ありがとう」――。子どもたちの言葉に勇気りんりんになりますよね!

【所長】こちらに来るときにバスから「奇跡の一本松」が見えたと思います。あの「奇跡の一本松」は土地が地震の影響で地盤沈下したことにより、根が海水を吸い込むなどし、残念ながら、枯れてしまいました。でも、モニュメントになっても、高田松原に7万本あった松の中で唯一倒れずに生きていた、私たちの希望であることに変わりはありません。この街の人たちの心の復興にも、私たちは懸命に尽くしたいと思います。

【 奇跡の一本松の全景】

~ 高田幹部交番のあゆみ(抜粋) ~

明治8(1875)年3月   第6登米警察出張所氷上屯所

明治17(1884)年12月 横田警察署盛分署氷上交番所

明治19(1886)年10月 盛警察署氷上派出所

明治23(1890)年10月 高田駐在所

明治30(1897)年3月   盛警察署高田分署

大正4(1915)年5月  高田警部補派出所

昭和23(1948)年4月  高田町警察署

昭和26(1951)年10月 盛地区警察署高田警部派出所

昭和43(1968)年4月  大船渡警察署高田警察官派出所

平成6(1994)年11月  大船渡警察署高田幹部交番

平成23(2011)年3月  東日本大震災の津波により流出

平成24(2012)年3月  仮設交番設置

平成28(2016)年4月  新築移転

 

 

 

 

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