みんなで守ろう!地域の安全

文字サイズ:

ぼうはん日本

全国読売防犯協力会
〒100-8055 東京都千代田区大手町1-7-1
TEL.03-3216-9024 FAX.03-3216-7113

260万人を見守る山岳救助隊

2011年10月取材

都心から1時間程度でアクセスできる手軽さ。フランスのタイヤメーカーが選ぶミシュランガイドで三ツ星に選ばれた山――高尾山(東京都八王子市)。

高さ634mのスカイツリーにも及ばない標高599mの低山。しかしながら昨今流行の登山ブームの影響やミシュランガイドの効果か、カラフルな「山ガール」や外国人観光客等でにぎわい、入山者は年間260万人を超えるといいます。

関東の駅百選=JR中央本線の高尾駅北口。京王電鉄の高尾線が乗り入れ接続駅となっている。

高尾山系=多摩御陵に通じる本淺川橋から望む

高尾山岳救助隊

この高尾山を管轄する警察署は警視庁高尾警察署です。同署で組織された高尾山岳救助隊は平成19年6月、駐在所員及び若手警察官合わせて15名の隊員で結成されました。

管内にある高尾下駐在所の田中信考警部補と西浅川駐在所の川口淳一警部補は、同隊に所属します。ふだんは駐在所に勤務して住民の“安全・安心”のため地域に溶け込んで治安維持に努めています。救助要請があると連絡を取り合って現場に向かいます。二人に話を聞きました。

「われわれはふだん制服を着て駐在所に勤務しています。山での遭難、救助要請があると着替えて出動します」「山岳救助訓練は不定期ですが、月1回のペース で行っています」と二人の答え。山岳救助隊員になる資格は特にありませんが、隊員の中には機動隊のレンジャー経験者もいます。

登山に必要な装備を

「高尾山は標高が高くないので、軽い気持ちでハイキングに来る人がいます。観光地の認識でハイヒールを履いて来る登山者もいます。このような人が遭難した り、救助を要請するパターンが多いですね。特に装備品が不備(地図、飲料水、照明器具など)の登山者は注意してほしいですね」と田中さんは安易な登山者に 警鐘を鳴らします。

実際、照明器具を持たずに登山し、下山が遅くなり、「真っ暗で何も見えない。降りられない」と救助要請をした登山者もありました。

高尾山はハイキングがてら、気軽に登れる山ですが、甘く見ていると事故につながり、最悪の場合、命を落とすことにもなりかねません。

下山時に多い事故

高尾山で起きる事故の中では、下山時のものが多いといいます。「最近、中高年者の登山が増えていますが、その中で、山を降りる際に、転倒したり、ねんざや 骨折をされる人が多いです。行きの登りではまだ体力があるのですが、下りになると踏ん張りが利かなくなり、転倒してけがをすることが多いですね」と田中さ ん。
また、下山時にケーブルカーの利用を予定していたが、繁忙期の混雑のため1~2時間待つと聞いて、近道を歩いていこうと登山ルートを外れ、転倒し負傷する こともあるといいます。(高尾山は最寄りの京王線高尾山口駅から程近い距離に、ケーブルカーとリフトの駅があり、これらの乗り物で中腹まで登り降りするこ とができます)

山での変死・自殺

遭難しても救助され、無事下山できる登山者もいれば、中には不幸にして亡くなる人もいます。

「68歳の男性を遭難3日後に発見し救助したことがありました。当人や家族に感謝されたことは非常に嬉しかったですね」と川口さん。いままでに救助した人の中で最高年齢は96歳の男性だそうです。

一方、亡くなって発見される人たちは、主に変死・自殺者で年間数十人に及ぶといいます。

登山者や山菜取りの人などから、「木にロープが垂れているのはおかしい」と通報があり、行ってみると自殺者だったケース。また、山の上から下の谷を見ると 季節はずれの花が見え、「この時期におかしい」と思って行ってみると、花に見えたのは実は、ポリ容器で、近くに焼身自殺体を発見したこともありました。

川口さんは「残念ながらご遺体を発見して、家族のもとに返す時も、感謝されることがありますね。行方不明の家族がご遺体とはいえ再会できたことで御礼の言 葉をいただくことが多いです。いずれにしても御礼や感謝の言葉を聞くたびにやりがいを感じます」と仕事への喜びを語りました。

川口さん自身は高校生のときに登山を始め、剣岳や北アルプスなどにも登っているエキスパート。また、奥多摩の山岳を巡る70㎞強のコースを24時間以内で駆け抜ける「日本山岳耐久レース」にも出場した経験があるトレイルランナーでもあります。

一方、田中さんは高尾警察署内の「少年柔剣道クラブ」で地元の子どもたちに柔道を教えているコーチです。教え子らは東京都の「少年柔道大会」で優勝し、 「全国大会」に出場したこともある強豪チーム。2008年の北京オリンピック柔道競技女子52Kg級で銅メダルに輝いた中村美里選手は同クラブの出身で す。

写真は高尾下駐在所=バイクと四駆での出動体制

二人の各駐在所はそれぞれ約700世帯を受け持っています。田中さんは現在の駐在所に勤務して5年目でトータルすると12年になります。川口さんは14年間勤務しています。

駐在所勤務の場合、家族でその地に根を下ろして“生活”します。“駐在さん”と“山岳救助隊”という二つの“顔”を持つ二人は、高尾山をバックグラウンドとして常に“観光客”と“地域住民”の安全を見守っています。

戻る